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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)2282号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 そこで、まず、旧本件家屋に対する右賃貸借契約が一時使用を目的とする賃貸借契約であるか否かについて判断する。

(一) ところで、区画整理事業の実施に伴い道路敷地となることが予定されている土地を敷地とする家屋の賃貸借契約が一時使用を目的とする賃貸借契約であると評価されるためには、ただ客観的に敷地が道路敷地となることが予定されていただけでは足りず、このような状況が主観的にも賃貸借契約の内容に反映され、その期限を区画整理実施の時までとし、その際には賃借人において賃借家屋を明渡す旨約させておくことを要すると解すべきである。

(二) そして、これを本件についてみると、本件土地が道路敷地となることが予定され、昭和二三年一二月一〇日には本件土地について原告主張のとおりの仮換地指定がなされたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によると、被告が旧本件家屋を同訴外人から賃借したころには、その敷地である本件土地が大阪復興都市計画街路「泉尾今里町」の道路敷地として利用されることが決定していたことが認められる。

しかし、このような状況が右賃貸借契約の内容に反映されていたか否かについて検討してみると、<証拠>を総合すると、被告が賃借した旧本件家屋を含む右家屋は、そのころ新築されたものであり、そのためもあつて賃料が月一、五〇〇円であつたばかりでなく、賃借した際には敷金として三、〇〇〇円、権利金として六万五、〇〇〇円を支払つていたこと、被告が賃借した際には賃貸借関係の内容を明確にするため賃貸借契約証書を作成したが、そのなかにも賃貸の期限を区画整理実施の時までとする特別の約定が記載されていたようなことはなく、また、右賃貸契約締結の際に権利金、敷金の領収証を作成した同訴外人の実子である訴外渡辺泰においても、右のような期限の定があつたことは知らないことが認められ、右認定事実によると、被告が旧本件家屋を賃貸するに当たつては、賃貸借の期限について特別の定めはなく、原告主張のとおりの状況が賃貸借契約の内容に反映されていなかつたものと認するのが相当であり、証人藤本豊の証言のうち右推認に反する部分は措信することができない。

そうすると、被告が旧本件家屋を賃借した当時その敷地であつた本件土地が区画整理の実施に伴い、道路敷地となることが確定していたことは認められるが、このような状況が右賃貸借契約の内容に反映されていたことについては結局これを認めることはできないので、右賃借契約は一時使用を目的とする賃貸借契約であると評価することはできず、したがつて、一時使用であることを前提とする原告の主張は失当である。

三 つぎに、不確定期限付の合意解約の主張について判断すると、証人渡辺泰の証言によつても、右賃貸借契約後同証人から数回にわたり被告に対して、区画整理が実施された時には旧本件家屋を明渡してもらいたい旨の申し入れがなされたことが認められるにすぎず、本件全証拠によるも被告がこの申し入れを承諾したことを認定するに足りない。

したがつて、旧本件家屋に対する賃貸借契約について不確定期限付の合意解約が成立したことを前提とする原告の主張も失当である。

四 よつて、本件土地に対する仮換地指定はいわゆる換地精算ないし収用に準ずるものであるとする原告の主張について判断すると、本件土地について原告主張のとおりの仮換地指定がなされたことは右のとおりであり、<証拠>によると、仮換地の指定は本件土地を含む合計939.07平方メートルの土地に対して三〇パーセント強減の646.28平方メートルの土地が指定されたことが認められるのであつて、右認定事実によると、本件土地に対する仮換地の指定が原告主張の換地清算ないし収用に準ずべきものであるとは到底いえない。

五 最後に、旧本件家屋が区画整理事業の実施に伴なう仮換地上への移築により、移築された本件家屋と同一性を失つたとの主張について判断する。

(一) ところで、区画整理事業の実施に伴い従前の土地にあつた旧家屋を仮換地上に移築し、仮換地上に新家屋が建築された場合においても、従前の土地上にあつた旧家屋の賃借人を仮換地上の新家屋に居住させ、賃貸借契約を継続させるのが社会通念上相当であると認められる場合には、旧家屋の移築に際し、一部新材料を使用し、面積に若干の増減があつても、家屋自体の同一性は失われないと解すべきである。

(二) そして、これを本件についてみると、旧本件家屋を含む右家屋が昭和四二年一一月下旬ころ区画整理事業の施行者である大阪市長によつて本件土地から仮換地上に移築され、本件家屋となつたことは当事者間に争いがなく、<証拠>を総合すると、仮換地上に移築された本件家屋は旧本件家屋と同様木造で旧本件家屋よりもある程度狭く、かつ、新材料を使用したのは約三〇パーセントにすぎず、旧本件家屋の古材のうち使用可能なものはすべて使用したことが認められる。

そして、右認定事実によると、本件家屋は大阪市長によつて被告を居住させるために仮換地上に移築されたものであり、構造、面積にも著しい変化はなく、新材料を使用したのは約三〇パーセントにすぎないのであるから、旧本件家屋の賃借人である被告を移築された本件家屋に居住させるのが相当であり、したがつて、旧本件家屋と本件家屋とは、同一性を有しているものと解すべく、同一性を有しないことを前提とする原告の主張は失当である。(中山博泰)

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